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袖釦の事情【札幌パルコ店】
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2025.12.11 GINZAグローバルスタイル・コンフォート 札幌パルコ店
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こんにちは。

 

鈴木(晴)です。

 

 

2025年もあと一ヶ月を切りました。

成人式用途もかなり落ち着いてきています。

これからは新社会人として4月から使いたいという方が増えてくるだろうと予想しています。

 

その年代はスーツのオーダー自体が初めてという方も少なくありません。

そういったときにかなり迷うのが袖釦です。

 

ベントや腰ポケットは用途で明確に違いがあるので決まりやすいですが袖釦は装飾です。

なので今回は袖釦の歴史や選び方についてご紹介します。

 

 

 

 

歴史

 

袖釦の発祥は諸説ありますがフランスの皇帝として有名なナポレオン・ボナパルトの指示で釦をつけたという説が有力です。

 

1812年のロシア戦役と呼ばれる戦いでナポレオンはロシア帝国に侵攻します。

この戦いは6月から12月の半年間に亘って繰り広げられ、後半の冬は厳しい寒さが襲ってきます。

兵士たちは体調を崩したときジャケットの袖で鼻水を拭いていたといわれています。

ナポレオンは兵士達の身なりから敵国兵士を威圧することを重んじていたといわれており、そのみっともない行動をやめさせるため、袖に釦を取り付けさせて鼻水を拭けないようにしたという説です。

 

現在は袖口から肩にかけて一列に釦が並んでいますが、当時は袖口の一周に釦が付いていたといわれています。

 

 

選び方

 

かつては出身地を表すものでした。

イングランド出身は4つ、スコットランドは3つ、ウェールズなら5つと一目でわかるようになっていました。

特権意識、貴族階級が厳しかった英国ならではの歴史です。

 

その後どのタイミングかはわかりませんがフロント釦のデザインに合わせて袖釦を設定するようになったのではないかと思います。

 

 

 

①前釦、袖釦を合計して5個

 

フロントの釦と袖の釦(片側)が合計で5個になるようにするというもので、古い英国式スーツで用いられていた考え方です。

現代では、この考え方はあまり主流ではありません。

 

当時フロント3つボタンが主流でこの法則から行くと2つになりますがややカジュアルな印象になるため、この場合は3つでも許されていたようです。

フロントデザインが2つボタンであれば、5-2で3個。

3つボタン(段返り含む)であれば6-3で3個。

 

ダブルブレストの場合は、横並びの釦は1として数えます。
6つあるデザインの場合は3として計算します。

 

 

 

 

 

②前釦+1個

フロントの釦に1足した数が適正という考え方です。

フロントデザインが2つボタンであれば、2+1で3個。

3つボタン(段返り含む)であれば3+1で4個。

 

ダブルブレストは、①と同様に横並びを1として数えます。

 

 

この二つが袖釦の数の設定として広く使われていました。

 

それでは、スーツの主要国である英国・イタリアの現在はどうなっているのでしょうか。

基本的にはビスポークなので、その店が販売している既製品やスナップショットを参考にします。

 

英国

 

Henry Poole(ヘンリープール)

サヴィル・ロウ最古のテーラーです。

英国スタイルにしては釦位置が低く設定されているので、Vゾーンが深くウエストコートやネクタイが広く見えるエレガントなデザインです。

フロントデザインは2つ釦、ダブルがありました。袖釦はどちらも4つ釦で統一されています。

インスタのスナップを見る限りですが、3つ釦はありませんでした。

 

Anderson & Sheppard(アンダーソン&シェパード)

英国の仕立て屋の中でもかなり古くからスーツを仕立てています。

英国の現国王であるチャールズ三世も、この店でスーツを仕立てています。

サヴィル・ロウの中では柔らかめな仕立て上がりと言われています。

フロントデザインは2つ釦、3つ釦、ダブルがありました。確認できる限りではどれも4つ釦で統一されているようです。

 

Huntsman & Sons(ハンツマン)

サヴィル・ロウの中でも最高価格で衣服を提供しており、映画『Kingsman』のモデルにもなりました。

構築的な肩のラインが特徴で、1km先から見てもハンツマンだとわかるという話があるほどです。

基本的にスーツは1つ釦、ダブルが確認できました。

ジャケットは1つ釦、2つ釦がありましたが、スーツ・ジャケットどちらも4つ釦で統一されています。

 

Gieves & Hawkes(ギーブス&ホークス)

古くから海軍の制服を仕立ててきた伝統ある仕立て屋です。

敬礼をしたときに美しく見えるようにアームホールをかなり高めに設定しており、脇に食い込んで痛みを感じる人が出てくるほどだともいわれています。

フロントデザインは2つ釦、3つ釦、ダブルがありました。

ただ、フロントデザインにかかわらず袖は4つ釦で統一されているように見えます。

 

イタリア

 

kiton(キートン)

世界最高峰のハンドメイドを仕立てるサルトリアです。

ゴージラインや釦位置が低めに設定されていて、パッドや芯地を使用せずとも美しいシルエットに仕立て上げる素晴らしい技術を持っています。

ナポリスーツの特徴であるマニカ・カミーチャは他よりも検挙に入っていて主張しすぎず万能に使用できます。

フロントは2つ釦、3つ釦、ダブルが確認できました。全て4つ釦重ねで統一されています。

 

RUBINACCI(ルビナッチ)

イタリアのロンドンハウスを起源とするサルトリアで、英国の特徴である重厚感・構築的といった雰囲気ですが、要所のデザインはナポリスタイル(エクステッドダーツ、マニカカミーチャ等)です。

フロントは3つ釦、ダブルでがありましたが2つ釦は確認できませんでした。

袖釦は基本的に4つで重ねです。私の見間違いかもしれませんが、3つ重ねが一つありました。

 

Brioni(ブリオーニ)

世界最高峰とされるブランドで、イタリアスーツは軽い着心地で有名ですがここは貫禄があることが特徴です。

フロントは3つ釦が見つからず、2つ釦とダブルブレストだけでした

袖釦は全て4つ釦です。重ねるかどうかはものによりますが、ダークトーンのフォーマルよりは重ねずやや明るいグリーン等は重ねていました。

 

Cesare Attolini(アットリーニ)

キートンと並ぶナポリブランドで、普遍的なカッティングが特徴です。

フロントは2つ釦、3つ釦、ダブルのジャケットがそれぞれ確認できました。

どれも4つ釦の重ねるスタイルで、ジャケパン等のカジュアルな着方でも統一されていました。

 

 

このようにフロントデザインに限らず4つ釦が基本になっています。

迷うなら、4つ一択です。

 

重ねる、重ねないはイタリア・英国どちらのスタイルの寄せるか等によって分けると良いと思います。

特にそこまでこだわりがないなら重ねない方が万能に使えます。

 

コンセプトをもって①や②のように釦の数を選び、たとえそれが基本の4つになったとしてもそこに至るまでの思考と選択があるのであれば私はそれもこだわりだと思っています。

 

 

鈴木(晴)

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