こんにちは。
気温も下がり、装いの楽しい季節になってきました。
前回は同じオーダースーツでも大きな違いがあるという部分のお話をさせて頂きました。
今回はその違いについてより深く考えていきたいと思います。
フルオーダー、イージーオーダー、パターンオーダー、カスタムオーダーなど様々な呼称がある中で、
それぞれが明確に定義されている訳ではないので一般的な認識という話になっていきますが、
フルオーダーが最もコスト、納期がかかるオーダースーツになります。
お店やブランドによっても差も勿論ございますが、フルオーダーではお客様の採寸データを元に0から型紙を起こし、
仮縫いや中縫いと呼ばれる製作途中の段階でのフィッティング確認が複数回行われた後、
最終的な製品が仕上がるというのが大まかな過程になるかと存じます。
多くの場合はテーラーと呼ばれる縫製職人がミシンや手縫いにて縫い進めていくため、
縫製工程だけでも数十時間を要し製作にかかるコストは必然的に大きくなります。
一方でパターンオーダー等は予めベースとなる型紙があり、それを元にサイズ展開されたサンプルであるゲージ服を使用して長さや身幅等を決定し、そのデータをCADで再度型紙として展開し、縫製が行われます。
一般的には仮縫いなどは経ず、注文時の来店の次は仕上りになります。
縫製の工程においても縫製工場にて生産されることが殆どとなり、1着縫い上げるのに要する時間も大きく短縮できる為、フルオーダーと比べると製作コストも抑えることができます。
縫製だけでなく、様々な部分において要している手間、作業が異なっています。
生地は何もしていない状態ですと平らな面です。
しかしながらウールなど動物繊維は特に蒸気や熱、圧力で形を変えることができます。
必要に応じてアイロンにて生地を変形させていく作業をクセ取りと言います。
人体はほぼ全ての箇所が丸みを帯びた立体です。平らな布のままですとどうしても人体の立体を追うことは難しいです。
クセ取りを行うことで胸や尻、ウエストのライン、背中などより身体の形に沿うような洋服を作ることができます。
このクセ取りという作業、非常に技術がいる作業であり、随所に施すには時間も労力も必要になってきます。
パターンオーダーにおいても少なからず行われる作業ではありますが、
フルオーダーではよりしっかりとしたクセ取りが行われる為、仕上りの違いに影響していきます。
あまり話題には上がらない部分ですが、スーツの骨組みとなる副資材である芯地や肩パッドなども大きく異なってきます。
パターンオーダーでは既に作られている資材を使いますが、フルオーダーではお客様に合わせて芯地やパッドも手作りされることが多いです。
他にも製造過程における違いは多くあり、それに伴って1着を仕上げるのに要する時間という面でも大きな違いがあり、納期やコストの違いに繋がっているということです。
どちらもオーダースーツという製品なので一個人様に向けて作られている洋服ではございますが、物作りの観点では大きく異なる部分が多いです。
作りの良さでは多くの手間暇がかかっているフルオーダーの方が良くなるのは当然のことです。
しかしながらそれに伴い費用も大きくなり、手元に届くまでの時間も長く要するといった側面もございます。
パターンオーダーのスーツはフルオーダーまではコストや時間をかけず、それぞれのサイズに合ったスーツを手に入れられるという部分が強みになっているのかと思います。
カジュアルなものでは数百円で洋服が買える時代、1着のスーツにかけるコストは下がっていきました。
既製品のスーツでは1万円以下で買えるものもございます。
一方で近年では物を大切に長く使うという考えも広く浸透してきている部分もあるのかと思います。
そして様々なジャンルにおいてよりパーソナルな拘りを持った物を所有したいという方も非常に多くなっています。
そのような中でパターンオーダーは比較的価格を抑え、納期も1カ月ほどで拘りを持ったスーツが作れるというメリットから、ここ数年で広く知れ渡ってきたというのが私の考えです。
長くなりましたが今回はこのあたりに致します。
あくまでも10年紳士服に携わってきた私個人の知識、考えで御座いますのでご理解いただけますと幸いでございます。
次回以降でも他の視点から違いを比較していきたいと思います。
ご興味をお持ちいただける方は引き続きお付き合いいただけますと幸いでございます。
MARUNOUCHIグローバルスタイル 横浜スカイビル店
曽根